葬儀社社長が葬儀について真剣に考えるコラム。
書き始めたところ、どうにも止まらなくなり4回目となりました。今日で「お葬式を行う目的意義」に関しては、一区切りとなります。最後までお付き合いください。
前回までの記事はこちらからどうぞ↓
お葬式を行う目的・意義とは?③

5、さまざまな感情の処理(社会心理的役割)

人が死ぬとさまざまな感情にとらわれます。歴史的に言えば、人の死が新たな死を招く祟りのようなものを引き起こすのではないかと恐れられたりもしました。こうした恐怖感を和らげるために死者の霊を愛惜する儀礼が要請されました。また、死者をいとおしみ、愛惜の念を抱くと同時に、遺体が腐敗することへ恐怖感を抱いたりもします。こうした感情を緩和するためにも弔いの儀礼が要請されてきました。
(碑文谷創著 表現文化社『葬儀概論』より原文のまま転載)
お葬式の目的5つ目は、『さまざまな感情の処理』です。

祟りや死への恐怖から来る風習

現代では、祟りを気にされる方はほとんどいないのでピンとこないかもしれません。しかし、お葬式には、この祟りや恐怖感を和らげるための風習が結構あります。

『清めの塩』がその最たるものでしょうか?
死を穢れとする神道から来た風習ですが、いまだに会葬礼状に塩が添えられています。(浄土真宗の場合は、入れない事もあります)
出棺の際の道順もそうですね。火葬場までの道と帰りの道が(全く)一緒にならないように配慮します。
その他にも、最近では見かけなくなりましたが(さいたま市近辺では)お棺の中に身代わり人形を入れたりするのも、亡くなった人が新たな死を呼ぶのではないか?という恐れからきています。
それこそ、科学の発達していない時代は、流行り病や災害などが起こった際など、祟りだと考えられてきました。だから、亡くなった人は丁重に葬る必要があると。
現代では、祟りへの恐れというよりも、『死』そのものに対する恐れとして、風習が残っていると捉えて頂ければよいと思います。

15年前の記憶

私自身強烈に覚えていることがあります。それは15年前のこと。
友人に子供が生まれ、そのお祝いで仕事終わりで遊び行った際に、「塩を撒いてから家に入って。」と言われ、結構ショックを受けたのを覚えています。
葬祭業を営む私にとっては日常である「お葬式」も、ほとんどの人にとって一生に何度かしかない「非日常」です。改めて葬儀や穢れに対する恐れというのは、日本人のDNAにしっかりと残っているんだなぁと感じました。

6、教育的役割

人の死を悼んで人々が集まり営まれる葬儀は、集まる人々に人のいのちの大切さ、生ある人は必ず死ぬべき存在であることを知らしめます。
そこで人々は、死が周囲の人に悲嘆をもたらすほど大きな事実であることに直面し、人のいのちの大切さを体験的に教えられるのです。葬儀という場面で、人々は死の事実に直面し、その事実を体験することから生のかけがえのない大切さを知ります。
またそこで注がれる豊かな愛や祈りを体験することにより、死がけっして終わりや無をもたらすものではないということを学びとります。
(碑文谷創著 表現文化社『葬儀概論』より一部抜粋)

大切な人との別れを通して学ぶこと

葬儀の場では、大人も子供も様々なことを学びます。
大切な人の死を通して、いのちの大切さや、感謝することの大切さ、人に対する優しさ、強さを学びます。
周囲の人が悲しむ姿を見て、「故人はこんなにも多くの人に愛されていたのか。自分もこれからの人生、多くの人に感謝されるような生き方をしよう!」と、葬儀を経験する前と後で、人生が大きく変わり、好転していった方も大勢いらっしゃいます。

子供たちへの教育的役割

「死」は誰にも訪れます。100%です。「死」という、限りがあるから、「生」がかけがえのないものとなるのです。
また、葬儀は、子供たちへの教育の役割も大いにあります。

子供たちは、親の真似をして育ちます。
葬儀の時に、親が涙を流す姿を見て、物心がついていない子供でも悲しくなり泣きだします。例え、その時の記憶を忘れてしまったとしても、自宅で毎日手を合わせている姿を子供たちは見ています。
先祖や家族を大切にすること、ご縁を大切にすることを、日々の暮らしから学びます。
人に感謝する子供に育てたいですよね。そのためには、まず自分が感謝することを心がけたいですね。
ちょうどお彼岸の時期ですので、私もこの連休でお墓参りに出かけたいと思います。
最後に
長々と4回に渡り、葬儀の目的・意義について綴ってきました。
自分自身、改めて葬儀について考える良い機会となりました。これらは、学校では絶対に教えてくれないけれど、人生において非常に大切なことだと私は思います。
人が亡くなる確率は100%です。全員に平等にいつか死が訪れます。そして、これから生きていく中で、葬儀を経験されることもあるでしょう。その時に、目的や意義について、少し頭に入れておいていただけるだけでも、心持ちやご家族への配慮も変わってくると思います。少しでも参考になれば幸いです。
最後までご覧頂きありがとうございました。
代表 小杉英介
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